15日(封切り日)にTOHOシネマズ直方で映画「天地明察」を観てきました。

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この映画、「宇宙兄弟」見に行ったときに予告が流れていて、絶対みたいって思ってた映画です。沖方丁による原作小説は全国の本屋店員が選ぶ「本屋大賞」にも選ばれた作品で僕も上映前に単行本の上巻だけ読みました。


この映画は江戸時代、徳川3代目将軍家綱の時代に改暦の為に奮闘した安井算哲(渋川春海)を主人公とした物語。

当時の日本は「宣明暦」という中国の古い暦を使っていました。800年以上使ってるその暦が、どうも狂って来ているという事で、暦を改めねばならないという話に。

しかし、当時、暦を司る権利は幕府にはなく朝廷にありました。暦というものは人々の生活の基準になるべき大切なもので、暦を司る事は強大な権力とも言える時代でした。だから朝廷は相手が幕府といえども口を出されたくありません。

それどころか暦自体が間違ってるとなれば朝廷の権威は失墜してしまいます。なので朝廷側は暦が間違ってることを認めたくありません。改暦を唱えることは朝廷の権威に傷を付ける事になります。なので改暦を口にすることさえ簡単にできない時代でした。

それを気の遠くなるような地道な観測と算術で、新しい暦(大和歴)を認めさせようとしたのが主人公の算哲です。幕府の後ろ盾があるといえども平民である算哲が、朝廷に意見するのです。当時としてはあり得ないことでした。


安井算哲は元々は将軍の前で碁を実演してみせる”碁打ち”だったのですが、算術や天文、暦にひじょうに関心を持つ人物でもありました。ある時、日本全国の北極星の位置から緯度を測る「北極出地」に参加して実績をあげたことから、会津藩主や水戸光圀らから改暦事業のリーダーに選ばれます。

改暦を面白くなく思っている朝廷から数々の妨害をうけつつも、朝廷に改暦を認めさせるために「三暦勝負」というどの暦が正しいか実証するための賭けを大衆に呼びかけます。長年の観測と計算から「授時暦」が正しいと決め、命がけの勝負に挑む算哲でしたが…。

という感じの物語です。


最初予告を観たとき江戸時代の天体観測の話かな?ってイメージだったんですけど、暦の話なのですね。しかし暦の正しさを証明するには太陽、月、星の観測は欠かせず、特に日食月食の動きは大変重要なものになってきます。そこで天体観測が出てくる訳です。

それにしても江戸時代初期、しかも鎖国の時代に、すでにこういう観測技術と天文知識があったのですね。驚きです。


映画見終わったあとの一番の感想は、こんな時代劇って観たことあるか!?いやない(反語)っていう感想でした。この映画、時代劇の割に戦闘シーンというかチャンバラシーンがほとんど出てきません。途中、朝廷に雇われた(?)忍者集団に観測所が襲われるシーンがありますが、それくらいです。

そして登場する道場も、剣術道場ではなく算術道場。江戸時代の知的な文化を描いた時代劇ってあまりないと思います。神社に算術の絵馬があるというのも面白い。

チャンバラシーンとかほとんど無いのに手に汗握る展開が何度もあってぐいぐい作品の世界に引き込まれました。すんなり万事上手く行くという訳でもなく、ピンチや挫折が描かれたところがぐっと物語を引き立てたのではないかと思います。

道半ばで倒れていく師や理解者達の想いを引き継いで、果敢に挑んでいく算哲の姿に心を揺さぶられました。

また、前半の「北極出地」のシーンはコミカルな演出が多くて客席から笑いもおこってました。この北極出地の旅の楽しさが後の算哲におおきな影響を与えたんだなって思います。


この算哲という主人公も魅力的だったと思います。算術や天文など自分の好きなことには我を忘れて夢中になる人物で、夢中になるあまりドジをしてしまうところがあるのですが、そこが人間味があって愛らしいところだなって思いました。


原作本買ってから気が付いたのですが、この映画の原作者は元々はラノベ出身の作家らしいです。どおりでラノベ好きな僕が読みやすいなって印象を抱いた訳ですよw

原作のヒロイン(えん)、見事なツンデレキャラですからねw ただ映画版のえんはツンデレ成分が全然なかったのでちょっとその辺は惜しかったかな…。


個人的に原作に関していえば、下巻は買ってはいますがまだ読んでない状態で、映画公開まで読んでしまわないととは思ってはいたのですが暇がなくて読めていませんでした。しかし、上巻のみ読んだ時点で映画を観たことが逆にちょうどよかったのではないかと思いました。

導入部分は多少端折ってる部分があるので、原作でちょうど補完されてる感じになり、すんなり作品の世界に入れたのと、後半の展開をまったく知らないので「この先どうなる!?」というドキドキ感が味わえたことで、より映画を楽しむことができたのではないかと。


この映画、物語としても良くできてると思うので、時代劇好き、歴史好き、天文好きな人だけでなく、一般の映画好きな人も楽しめるのではないかと思います。それと映画のみを観たひとは原作のほうも是非とも読んで頂きたいです。けっこう映画は端折られてる部分あるので。


そういう訳で「天地明察」すごく面白い映画でした。たぶん個人的な趣味の補正がはいってるとは思いますが、少なくとも面白くないってことはないと思いますよ。少しでも興味のある方は是非劇場に足を運んで見てくださいね。

しかし今年は天文関係の邦画が豊富な年でしたねー。「はやぶさ」「宇宙兄弟」「天地明察」。個人的には「天文映画に外れなし!」って感じです。


■参考動画:映画「天地明察」予告篇■





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